ベーカリーフランチャイズ本部(加盟店60店舗、原材料・包材SKU 350品目)
在庫・発注エージェント
加盟店60店舗の原材料在庫を見守り、発注書の下書きを上げて承認を待つエージェントと、本部・加盟店・仕入先が一緒に使う発注ポータルを作りました。発注は店主が承認しないと出ません。

背景
お客様は加盟店60店舗を持つベーカリーフランチャイズの本部です。各加盟店は小麦粉、バター、クリーム、包材など原材料350品目を本部物流センターと指定仕入先2社から受け取ります。発注は店主の仕事でした。毎日閉店後に倉庫を回って在庫を数え、「先週と同じくらい」という勘で数量を決め、仕入先ごとにFAXやメッセンジャーで送っていました。毎日40分かかり、忙しい日は省略されました。
結果は両方向に表れました。週末のイベントや天気の変化を反映できず、主要材料が加盟店あたり週3回以上欠品し、逆に多めに頼んだ材料は賞味期限を過ぎて月商の4%が廃棄に回りました。本部は加盟店の在庫を月1回店主が送るExcelでしか把握できず、物流センターの在庫計画も1か月遅れの数字で立てていました。
つくったもの
目標は、数えて計算して書き写す作業をなくし、店主には数量を確認して承認する仕事だけを残すことでした。発注は店主が承認しないと出ません。5つのものを作りました。
1. 在庫の推定
POSの販売量とレシピごとの材料使用量、入荷記録から品目ごとの現在在庫を推定します。週1回店主がアプリで実棚卸をすると推定値が補正され、差異の大きい品目は理由(廃棄の記録漏れ、レシピ変更など)を尋ねます。毎日倉庫を回って数える作業はなくなりました。
2. 発注点の計算
品目ごとに販売推移、曜日パターン、本部のイベント日程、天気予報、仕入先のリードタイムと最小発注単位を組み合わせて「いつ、どれだけ」を計算します。入荷ロットごとの賞味期限を追跡し、期限が近い在庫があれば発注量を減らし、店主に先に使い切るべき品目を通知します。
3. 発注書の下書きと店主の承認
在庫が発注点を下回ると、仕入先ごとの発注書の下書きが店主のアプリに上がります。店主は品目ごとの数量と根拠(「週末イベントでクリームの需要1.6倍を予想」)を見て、直すかそのまま承認します。**承認なしに出る発注はありません。**店主が半日以内に反応しなければもう一度通知し、それでもなければ本部担当者に通知します。
4. 発注ポータル
本部物流センターと仕入先2社が同じポータルで発注を受け、納品を登録します。店主は入荷時にアプリで数量を確認し、発注と納品の差異は当日双方に表示されます。FAXとメッセンジャーで行き来していた発注が一か所に残ります。
5. 本部ダッシュボード
60店舗の在庫、発注、廃棄、欠品の状況をリアルタイムで確認できます。欠品が多い品目と店舗、廃棄が多い品目が順位で表示され、物流センターの在庫計画には加盟店の発注予測がそのまま使われます。
導入の流れ
| 期間 | 実施内容 |
|---|---|
| 1〜3週 | 加盟店5店舗の現場調査。350品目のレシピ使用量、リードタイム、最小発注単位を整理。過去1年のPOS・発注データを分析 |
| 4〜8週 | 在庫推定と発注点計算を構築。加盟店5店舗で店主の発注と並べて比較するシャドーモードを4週間 |
| 9〜12週 | 店主アプリの承認フロー、発注ポータル、仕入先連携。パイロットを15店舗に拡大 |
| 13〜16週 | 本部ダッシュボードを追加。60店舗全体に適用、店主教育、本部への運用移管 |
シャドーモードの4週間、エージェントの発注提案をそのまま採用していれば欠品は68%、廃棄は21%減っていたと計算されました。全面適用後の最初の2か月の実績はそれぞれ87%と23%の減少でした。店主が下書きの数量を修正した割合は初月の31%から3か月目には9%に下がりました。
店主の1日がどう変わったか
導入前、店主の閉店作業は倉庫を回って在庫を数え、仕入先3社に発注を送る40分で終わっていました。今は午後にアプリに上がった発注書の下書きを5分以内に確認して承認します。週末のイベントや雨の予報で数量が変わった品目には理由が書かれているので、直すかどうかをすぐに決められます。週1回の実棚卸では差異のある品目だけ数えればよくなりました。
本部の商品チームは月1回のExcelを待つ代わりに、ダッシュボードでどの店舗のどの材料がよく切れるかを確認し、物流センターの入荷計画を加盟店の発注予測に合わせています。
以下の表は、業務ごとに導入前と導入後を比較したものです。
成果
週3.2回 → 0.4回
加盟店あたりの主要材料の欠品回数
40分 → 5分
店主が毎晩在庫を数えて発注書を書いていた時間
-23%
賞味期限切れで廃棄する材料(金額ベース)
0件
店主の承認なしに出た発注
在庫の把握
導入前店主が毎日閉店後に倉庫を回って紙に数える。毎日40分、忙しい日は省略
導入後POSの販売量と入荷記録から在庫を推定し、週1回の実棚卸で補正。店主は差異のある品目だけ確認
発注量の決定
導入前店主の勘で「先週と同じくらい」。イベントや天気は反映されない。週3.2回欠品
導入後販売推移・曜日・イベント・天気・リードタイムから品目ごとの発注点を計算。週0.4回欠品
発注書の作成
導入前仕入先3社にそれぞれFAXやメッセンジャーで送信。入力ミスで誤納品が月2〜3件
導入後仕入先ごとの発注書の下書きが店主のアプリに上がり、承認するとポータル経由で送信。誤発注0件
店主の承認
導入前該当なし。店主が最初から全部書く
導入後下書きを見て数量を直して承認。1日5分。承認なしには発注されない
賞味期限の管理
導入前倉庫で見つかったときに廃棄。月商の4.1%を廃棄
導入後入荷ロットごとに期限を追跡し、期限が近い品目は発注量を減らして店主に通知。月商の3.2%
本部による加盟店在庫の把握
導入前月1回店主が報告するExcel。1か月遅れの数字
導入後60店舗の在庫・発注・廃棄状況を本部ダッシュボードでリアルタイムに
仕入先の納品確認
導入前納品書と発注書を店主が目視で照合。数量差異は次回発注時に発覚
導入後仕入先がポータルに納品登録し、店主が入荷時に数量確認。差異は当日表示


