産業用部品メーカー(締結部品、取引先約400社)
見積もり担当エージェント
メール・フォーム・添付図面で届く1日40件の見積もり依頼を読んで品目を照合し、ERPの注文履歴と顧客ごとの交渉単価で見積書の下書きを作り、担当者の承認後に送付とERP登録までつなぐエージェントです。

背景
お客様はボルト・ナットなどの締結部品を製造するメーカーで、約400社の取引先から1日30〜50件の見積もり依頼を受けています。営業3人と営業サポート2人が担当しています。依頼の60%はメール、25%はサイトのフォーム、残りはFAXと電話で届き、形式はばらばらです。「前回の規格で2,000個追加」のように履歴を知らないと理解できない依頼もあれば、PDF図面に規格表が付いて届くこともあります。
見積もりを1件出すには、担当者がERPでその取引先の注文履歴を探し、年2回更新される標準単価表と取引先ごとに交渉した単価を照合し、Excelの見積もり様式を埋めてPDFにしてメールを送り、ERPに見積もりを別途登録していました。1件あたり20分を超え、依頼が集中する月初には返答が翌日にずれ込んでいました。取引先ごとの交渉単価は担当者の個人Excelにあったため、担当者が席を外すと見積もりが止まり、更新前の単価表を適用するミスが月2〜3件発生して利益を失ったり送り直したりしていました。
つくったもの
目標は、担当者が探して書き写して照合する時間をなくし、単価を判断して承認する仕事だけを残すことでした。5つのものを作りました。
1. 依頼の読み取りと品目の照合
メール本文、サイトのフォーム、添付ファイル(Excel、PDF図面の規格表)から品目・規格・数量・納期・納品先を抽出します。「M8x30」「M8*30」「8mm 30」のような表記の違いを正規化して自社の品目コードに合わせ、確信度が低いときは無理に決めず候補を2〜3個示して担当者が選べるようにしました。「前回の規格」のように履歴が必要な表現は、その取引先の直近の注文から探します。
2. 履歴と単価の照会
取引先の直近の注文3件、交渉単価、標準単価表、数量区分の割引をERPから読み込みます。担当者の個人Excelに散らばっていた交渉単価は、プロジェクトの初期にERPへ移しました。下書きのすべての単価には根拠が付きます。「2026-03の交渉単価を適用」「標準単価 × 数量割引5%」のように、なぜこの数字なのかを担当者と代理承認者がすぐに分かります。
3. 見積書の下書き
取引先が慣れている既存のExcel様式をそのまま使います。納期は在庫と生産スケジュールを照会して提案し、利益率が基準を下回ると承認画面に警告を出します。
4. 承認と送付
担当者は確認画面で単価と納期を直して承認します。承認すると、PDF生成、担当者名でのメール送付、ERPへの見積もり登録が一度に続きます。**承認なしに出る見積もりはありません。**担当者が不在なら代理承認者に回り、単価の根拠が付いているのでそのまま承認できます。
5. フォロー
送付後7日間返答がなければ担当者に通知が届きます。見積もりごとの受注転換率と取引先ごとの返答時間をダッシュボードで確認できます。
導入の流れ
| 期間 | 実施内容 |
|---|---|
| 1〜2週 | 過去1年の見積もり4,800件を分析し、依頼の表記パターンと品目照合辞書を作成。個人Excelの交渉単価をERPへ移行 |
| 3〜5週 | 依頼の読み取りと履歴・単価照会を構築。担当者が出した見積もりと並べて比較するシャドーモードで2週間運用 |
| 6〜9週 | 下書き・承認・送付・ERP登録を接続。営業2人が先行して使いながら照合辞書と利益率基準を補正 |
| 10〜12週 | 納期提案、フォロー通知、ダッシュボードを追加。全担当者へ展開 |
| 13〜14週 | 運用移管。照合辞書と単価ルールの修正ガイド、モニタリング画面を引き渡し |
シャドーモードの2週間で、品目照合が担当者の判断と一致した割合は91%から辞書を補強した後に97%へ上がりました。残りは候補の中から担当者が選びます。導入後も四半期ごとに照合辞書と単価ルールを一緒に点検しています。
担当者の1日がどう変わったか
導入前、営業サポート担当者の朝は、夜間に溜まったメールを開いて規格を解読し、ERPを探し回ることから始まっていました。今は確認画面を開くと依頼が届いた順に下書きが並び、それぞれの単価の横に根拠が付いています。ほとんどは読んで承認するのに3分で終わり、残った時間は大口注文の単価交渉や新規取引先への対応のように、人が判断すべき仕事に使っています。
営業担当者が出張中でも見積もりは止まりません。代理承認者が根拠を見て承認すればよいからです。古い単価表を適用して送り直すことは、導入後4か月間で一度もありませんでした。
以下の表は、業務ごとに導入前と導入後を比較したものです。
成果
1日 → 1時間
見積もり依頼から送付までの時間(平均)
20分 → 3分
見積もり1件に担当者が使う時間。下書きの確認と承認のみ
月2〜3件 → 0件
古い単価表を適用して送り直していた見積もり
0件
承認なしに出た見積もり。すべての送付を担当者が承認
依頼内容の整理
導入前メールと添付ファイルを開いて品目・規格・数量・納期を手で書き写し、「M8x30」と「8mm 30」のような表記の違いを人が解釈。1件あたり5分
導入後メール・フォーム・添付(Excel、PDF図面の規格表)から自動抽出し、自社の品目コードに照合。確信度の低いものだけ候補から選ぶ。30秒
過去の注文・交渉単価の照会
導入前ERPで注文履歴を検索し、担当者の個人Excelにある顧客ごとの交渉単価と照合。1件あたり10分
導入後直近の注文3件、交渉単価、数量割引とその根拠が下書きの横に表示される。照会なし
納期の提案
導入前生産チームに電話やメッセンジャーで聞いて返事を待つ。半日待ち
導入後在庫と生産スケジュールを照会して納期を自動提案。即時
見積書の作成と送付
導入前Excelの様式を埋めてPDFにしてメールで送り、ERPに別途登録。1件あたり5分以上
導入後担当者が下書きを確認・承認すると、PDF生成、メール送付、ERP登録が自動で続く。1分
単価のミス
導入前更新前の単価表や古い交渉単価を適用し、利益を失うか送り直す。月2〜3件
導入後最新の交渉単価と数量区分を自動適用し、利益率が基準を下回ると承認前に警告。0件
担当者の不在時
導入前交渉単価を知る人がおらず見積もりが止まる
導入後代理承認者が単価の根拠を見てそのまま承認。遅延なし
見積もりのフォロー
導入前担当者の記憶に頼る。返答のない見積もりは忘れられる
導入後7日間無応答で通知と、見積もりごとの受注転換率ダッシュボード


