中堅3PL物流会社(社員450人、物流センター4拠点)
AX転換の診断とロードマップ
社員450人の3PL物流会社で12週間かけて業務30件を診断し、自動化の優先順位と2年間のロードマップを作成。そのうち2件をパイロットとして実際に運用し、ロードマップの最初の数字を検証したコンサルティングプロジェクトです。

背景
お客様は物流センター4拠点を運営する社員450人の3PL物流会社です。経営陣は「AIで何かをしなければ」という点では一致していましたが、何から始めるかを6か月間決められずにいました。ベンダーの提案書はそれぞれ違う方向を指し、チームリーダーは各自のチームの困りごとだけを語っていました。3年前に倉庫管理システムを入れ替えた際の苦労から、大規模プロジェクトへの警戒感もありました。
依頼は明確でした。「何を、どの順序で、なぜやるべきかを自社のデータで示してほしい。そして、その判断が正しいかを小さくてもいいから実際に動かして確かめてほしい。」
何をしたか
12週間を診断4週、ロードマップ2週、パイロット6週に分けました。ロードマップだけ出して終わるのではなく、その中の業務2件を実際に運用してロードマップの最初の数字を検証することが、このプロジェクトの核心でした。
1. 現場インタビューと業務インベントリ(1〜3週)
物流センター4拠点と本社で、現場作業者、チームリーダー、経営陣42人にインタビューし、半日ずつ作業に同行しました。そうして集めた業務30件を1つの表に整理しました。業務ごとに月あたりの人の作業時間、エラーの頻度とコスト、関連システム、必要なデータがどこにどんな形であるかを記録しました。
2. 採点と優先順位付け(3〜4週)
30件の業務を期待効果(時間、エラーコスト、顧客への影響)と難易度(データ準備度、システム連携、現場の変化の大きさ)で採点し、マトリクスに配置しました。効果が大きく難易度が低い9件を第1弾、効果は大きいがデータを先に整える必要がある8件を第2弾とし、13件は理由(「人の判断が核心」「月3時間だけ」「システム入れ替え後でないと不可」)とともに保留しました。保留リストも決定です。
3. ロードマップ(5〜6週)
2年間のロードマップを四半期単位で描きました。業務ごとに現場オーナーとIT担当、成功指標、必要なデータ整備作業、想定コストを記載しました。経営陣ワークショップで順序を2回調整した後に確定しました。
4. パイロット1、入荷検品(7〜12週)
作業者が送り状と現物を照合して手書きで記録していた入荷検品を、送り状の自動読み取りとスキャン数量の照合に置き換えました。差異のある案件だけが作業者に表示されます。物流センター1拠点の入荷ライン2本で4週間運用しました。
5. パイロット2、運送会社の請求書照合(7〜12週)
運送会社12社の月次請求書を運送記録と契約単価に自動照合し、不一致の案件だけを精算担当者に上げます。精算担当者は不一致の原因を確認し、運送会社に調整を依頼します。**請求金額の確定は人が行います。**2か月分の請求書で検証しました。
進め方
| 期間 | 実施内容 |
|---|---|
| 1〜3週 | 現場インタビュー42回、作業同行、業務インベントリ30件を作成 |
| 3〜4週 | 効果・難易度の採点、優先順位マトリクス、データ準備度表。チームリーダーによるレビュー |
| 5〜6週 | 2年間のロードマップ作成。経営陣ワークショップ2回で順序を確定、業務ごとにオーナーを指名 |
| 7〜12週 | パイロット2件の構築・運用。実測値でロードマップの残りの業務の効果を再推定 |
| 12週 | 最終報告。ロードマップ、パイロット結果、次の四半期の着手項目3件とデータ整備課題 |
パイロットの実測値は、入荷検品は事前推定より低く(推定-75%、実測-68%)、請求書照合は高く(推定-80%、実測-93%)出ました。この差を反映して残り7業務の効果を再推定し、第1弾ロードマップの総削減は年1.8万時間で確定しました。
経営陣の意思決定がどう変わったか
6か月間振り出しを繰り返していた「何から」という問いは、4週間で1枚の表に整理されました。ベンダーの提案書を比較する代わりに、自社の業務30件がどこに位置するかを見て決めます。保留した13件にも「なぜ今ではないのか」が書かれているので、同じ議論を繰り返しません。
何より、ロードマップの最初の数字がパイロットの実測値に裏付けられています。次の四半期の着手項目3件にはそれぞれ現場オーナーが決まっており、四半期ごとに指標で点検します。この会社は今、プロジェクトではなく体制で動いています。
以下の表は、業務ごとに導入前と導入後を比較したものです。
成果
30件 → 9件
診断した業務のうち2年以内に自動化する業務。残り21件は理由とともに保留
年1.8万時間
ロードマップ第1弾の9業務を自動化した場合に減る人の作業時間(推定)
2件
ロードマップを信頼できるものにするため12週間内に実際に運用したパイロット(入荷検品、請求書照合)
6週 → 3日
パイロット2の請求書照合。月次締め後6週間かかっていた精算確定が3日に
自動化候補の把握
導入前各チームリーダーが「うちのチームはこれが大変」と言うレベル。リストなし
導入後現場インタビュー42回と業務インベントリで業務30件を時間・エラー・データ準備度で採点。優先順位表
何から始めるかの決定
導入前経営会議のたびに振り出しに戻る。ベンダー提案書ごとに違う話。6か月間未決
導入後効果と難易度のマトリクスで第1弾9件、第2弾8件、保留13件を理由とともに決定。4週間で確定
データ準備度の確認
導入前「データは全部ある」という前提。始めてみるとないか使えない
導入後業務ごとに必要なデータがどのシステムにどんな形であるか、なければ何を先にすべきかを表に整理
入荷検品(パイロット1)
導入前送り状と現物を作業者が照合して手書きで記録。1件あたり25分、差異の発見は翌日
導入後送り状の自動読み取りとスキャン数量の照合、差異だけ表示。1件あたり8分、差異は即時
運送会社の請求書照合(パイロット2)
導入前運送会社12社の請求書を運送記録とExcelで照合。締め後6週間
導入後請求書を読み取って運送記録・契約単価と自動照合し、不一致だけ担当者へ。3日
投資判断の根拠
導入前ベンダー提案書の期待効果。未検証
導入後パイロット2件の実測値を基準に残り7業務の効果を再推定。実測ベース
実行体制
導入前IT部門に任せ、現場は要望を出すだけ。担当者なし
導入後業務ごとに現場オーナーとIT担当を決め、四半期ごとの点検会議と指標を定義。オーナー9人を指名


